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「入院患者を増やし安定的に高稼働で病床を運営する」、これは病院経営に携わる方々の共通した課題だと思います。
病床規模、病床機能にもよりますが、許可病床数200床以上の急性期病棟を持つ病院であれば、入院患者の主な獲得ルートは「救急患者」と「紹介患者」になります。
特に、安定的な病床運営を考える上では「紹介患者の獲得」は最も重要な課題と考えられます。
紹介患者の入院移行率は非紹介患者よりもかなり高く、外科系の診療科宛の紹介であれば50%以上の入院への移行が期待されます。
では、如何に紹介患者を獲得するか、開業医をはじめとする地域の医療機関へのアプローチを考える上では、「SWOT分析」と「5W1H」が重要になります。
地域に自院しかない場合は別ですが、競合する病院がある場合は、地域の中での自院の“強み・弱み・伸びしろ”を把握し、PRするべき項目とPR対象を検討して行動に移しましょうということです。
紹介患者の獲得 “強みを活かす”
まず“強み”とは何か。
例えば、自院の消化器内科は内視鏡を積極的に行っており、医師達も症例数を増やすのに意欲的なので積極的にアピールしよう……、これだけでは“強み”であるかは判断できません。
同じ医療圏にある競合病院と比較して「医師数」「手術・検査実績」が多いのか、対応できる手術・検査手技の種類(ESD、超音波内視鏡、ERCPなど)はどうか等、地域の中での相対評価により優れている場合を“強み”と考えるべきです。
では“強み”をどのようにアピールするのか。
一般的に“強み”は近隣の医療機関には浸透しており、紹介患者数の現状維持は可能ですが、大幅な紹介患者増は見込めません。
そこで少し離れたエリアにもPRすることにより、新たな紹介元の開拓・紹介患者の獲得が可能になると言われています。
紹介患者の獲得 “弱みの発想転換”
次に「弱み」です。
例えば「ウチは手術件数が少ないんだよね」とか「若い医師が少なくて…」という話をよく聞くことがあります。
勿論、病院としての大きな課題ではあるのですが、もし手術件数を増やそうとするのなら、発想の転換をお勧めすることがあります。
例えば、自分や家族が「がん」告知を受けた時、「2ヶ月後に手術します」と言われたら「えっ?」となる方も多いと思います。
また規模の大きな病院であれば経験を積むために若手医師が執刀するケースも多いと思われます。
そこで「手術件数が少ない=手術の待ち期間が短い(患者希望に沿って手術日程を決めることが可能)」とか「若い医師が少ない=ベテラン医師が主治医になり手術の執刀もする」と、“弱み”を患者さん目線でのメリットに置き換えてPRされてはいかがですか、とお伝えすることがあります。
この場合は近隣の医療機関プラス比較的大規模で手術件数が多い病院の近くの医療機関へのPRが効果的になります。
紹介患者の獲得 “伸びしろの視点”
最後に“伸びしろ”です。
診療体制や機能がそれなりに充実しているのに今一つ稼働が上がっていない部分は“伸びしろ”に当ります。
伸びていない理由としては、近隣の医療機関にその体制・機能が周知されていない可能性があります。
この話をすると、「ホームページで詳しく紹介している」とか「広報媒体を作成・配布しているので、地域の先生方それぐらいはご存知だよ」という返答をよく聞きます。
しかし、実際に地域の医療機関を訪問すると診療体制や機能について、「以前の情報」がアップデートされていない場面によく遭遇します。
特に、「〇〇科って常勤の先生がいなくなったのじゃなかったっけ?」とか、「CTお願いしたいけど、検査まで3週間ぐらいまたなきゃダメなのだよね」といったように、負の情報(だから紹介していない)は一度刷り込まれるとなかなか塗り替わりません。
ですので、“伸びしろ”については近隣の医療機関を中心に、最新の自院体制・機能を認知いただけるようにPRしていくことが重要になります。
このようにSWOT分析的に自院の“強み・弱み・伸びしろ”を把握することにより、効率的かつ効果が期待できる集患PRを実行する医療機関様が増えています。 次回は、今、改めて5W1Hを明確にしたPR戦略について紹介したいと思います。