
令和6年度診療報酬改定により、保険医療機関等の書面掲示事項については、「原則として、ウェブサイトに掲載しなければならないこと」となりました。
本記事では「保険医療機関等の書面掲示」のウェブサイト掲載について、令和6年度診療報酬改定の内容、書面掲示事項をホームページ(ウェブサイト)に掲載する場所、具体的な例文、対象となる施設基準等の項目と掲示事項をご紹介します。
※本コラムは2024年12月末日時点の情報に基づいています。
令和6年度診療報酬改定「書面掲示事項のウェブサイトへの掲載」とは
改定の内容
令和6年度診療報酬改定では「デジタル原則に基づき書面掲示についてインターネットでの閲覧を可能な状態にすることを原則義務づけするよう求められていることを踏まえ、保険医療機関、保険薬局及び指定訪問看護事業者における書面掲示について、原則として、ウェブサイトに掲載しなければならない」こととなりました。
(例)医療DX推進体制整備加算
[施設基準] | |
(1)~(6)略 | |
(7) | 医療DX推進の体制に関する事項及び質の高い診療を実施するための十分な情報を取得し、及び活用して診療を行うことについて、当該保険医療機関の見やすい場所に掲示していること。 |
(8) | (7)の掲示事項について、原則として、ウェブサイトに掲載していること。 |
(9) | 略 |
上記のように、保険医療機関等に掲示している事項について、原則としてホームページに掲載する必要があります。
経過措置・ホームページを持っていない場合の対応
本改正に際しては、令和7年5月31日までの経過措置が設けられています。
また、「自ら管理するウェブサイトを有しない保険医療機関等は対象外」です。
書面掲示事項をホームページに掲載する場所
書面掲示事項をホームページのどこに掲載するか、明確な規定はありません。掲載すべき項目が少ない場合は、トップページの医院概要や診療案内などに追記する形で対応すればよいでしょう。
届出をしている施設基準が多い場合は掲載項目が多くなります。書面掲示のためのページを設ける医療機関様もありますが、追加でページを制作すると制作費用がかかる場合があります。
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ホームページに掲載する際の例文
書面掲示事項をホームページに掲載するとき、具体的にどのように書けばよいのでしょう。
ここでは、MediClipsをご利用いただいている医療機関様からご依頼やご相談の多い項目(医療DX推進体制整備加算、明細書発行体制等加算、一般名処方加算、情報通信機器を用いた診療)について、例文をご紹介します。
保険医療機関の書面掲示(例文)
・医療DX推進体制整備加算
医療DX推進について
当院はオンライン資格確認により取得した診療情報を診察室で閲覧・活用できる体制を整えています。
また、電子処方箋および診療情報共有サービスの導入により、質の高い診療を実施するための十分な情報を取得・活用して診療を行っています。
・明細書発⾏体制等加算
明細書について
当院は療担規則に則り明細書を無償で交付しています。
また、自己負担のある患者様には診療報酬明細書、領収書を交付しています。
明細書の発行を希望しない患者様は、会計の際にお申し出ください。
・情報通信機器を用いた診療
情報通信機器を用いた診療について
情報通信機器を用いた診療の初診の場合、向精神薬を処方しておりません。
・⼀般名処⽅加算
一般名での処方について
後発医薬品があるお薬については、患者様へご説明の上、商品名ではなく一般名処方(有効成分の名称で処方すること)を行う場合があります。
これにより、特定の医薬品の供給が不足した場合であっても、患者様に必要な医薬品が提供しやすくなります。
※上記の例文は各医療機関様の体制等にそぐわない場合がありますので、ご状況に応じて修正のうえご活用ください。なお、例文のままホームページへ掲載したために生じた不利益・損害等について、弊社は一切の責任を負いかねます。
ホームページへの掲載が必要な施設基準等の項目
対象となる施設基準等および掲示事項
ホームページに掲載すべき内容は算定している加算等によって異なりますので、医療機関様のご状況に合わせてホームページに掲載する必要があります。
ホームページへの掲載が必要な施設基準等と掲示事項を以下のPDFにまとめましたので、ご活用ください。
※本コラムは2024年12月末日時点の情報に基づいています。
ホームページへの掲載が必要な施設基準等と掲示事項 | ![]() |
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追加情報
「令和6年3月27日保医発0327第10号『療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等』及び『保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等』の実施上の留意事項について(通知)」において、次の項目について「原則として、ウェブサイトに掲載しなければならない」ものとされています。
● 厚生労働大臣が定める掲示事項
従来から院内掲示とされていたものを含め、以下の5つの事項が「院内掲示事項及びウェブサイト掲載事項」として定められています。
- 入院基本料に関する事項
- 厚生労働大臣が指定する病院の病棟並びに厚生労働大臣が定める病院、基礎係数、機能評価係数Ⅰ、機能評価係数Ⅱ、救急補正係数及び激変緩和係数(平成24年厚生労働省告示第165号)別表第一から第三までの病院の欄に掲げる病院であること。
- 地方厚生(支)局長への届出事項に関する事項
- 明細書の発行状況に関する事項
- 保険外負担に関する事項
● 保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める基準等
・長期収載品の処方等又は調剤に関する事項
2024年10月より、長期収載品の処方等又は調剤について選定療養の仕組みが導入されました。
これに伴い、長期収載品の処方等又は調剤を行おうとする保険医療機関又は保険薬局は、本制度の趣旨及び特別の料金について院内の見やすい場所に患者にとって分かりやすく掲示し、原則として、ウェブサイトに掲載しなければなりません。
参考:厚⽣労働省ホームページ「後発医薬品のある先発医薬品(⻑期収載品)の選定療養について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_39830.html
その他、以下の項目があります。
・特別の療養環境の提供に係る基準に関する事項
・予約に基づく診察に関する事項
・保険医療機関が表示する診療時間以外の時間における診察に関する事項
・医科点数表等に規定する回数を超えて受けた診療であって別に厚生労働大臣が定めるものに関する事項
・前歯部の金属歯冠修復に使用する金合金又は白金加金の支給に関する事項
・金属床による総義歯の提供に関する事項
・う蝕に罹患している患者の指導管理に関する事項
・白内障に罹患している患者に対する水晶体再建に使用する眼鏡装用率の軽減効果を有する多焦点眼内レンズの支給に関する事項
・主として患者が操作等を行うプログラム医療機器であって、保険適用期間の終了後において患者の希望に基づき使用することが適当と認められるものの使用に関する事項
・間歇スキャン式持続血糖測定器の使用(算定告示に掲げる療養としての使用を除く。)に関する事項
・医療上必要があると認められない、患者の都合による精子の凍結又は融解に関する事項
● 保険薬局に係る厚生労働大臣が定める掲示事項
従来から院内掲示とされていたものを含め、以下の3つの事項が「院内掲示事項及びウェブサイト掲載事項」として定められています。
- 調剤報酬点数表の第2節区分番号「10の2」調剤管理料及び区分番号「10の3」服薬管理指導料に関する事項
- 調剤報酬点数表に基づき地方厚生(支)局長に届け出た事項に関する事項
- 保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則(昭和32年厚生省令第16号)第4条の2第2項及び第4条の2の2第1項並びに療担基準第26条の5第2項及び第26条の5の2第1項に規定する明細書の発行状況に関する事項
参考資料
※下記の他にも、告示等が公布されている場合がありますので、必ず最新の情報をご確認ください。
令和6年厚生労働省令第35号保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部を改正する省令
令和6年厚生労働省告示第55号高齢者の医療の確保に関する法律の規定による療養の給付等の取扱い及び担当に関する基準等の一部を改正する告示
令和6年3月5日保医発0305第4号診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)別添1 医科診療報酬点数表に関する事項
令和6年厚生労働省告示第58号基本診療料の施設基準等の一部を改正する告示
令和6年3月5日保医発0305第5号基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)
令和6年厚生労働省告示第59号特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件
令和6年3月5日保医発0305第5号基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(通知)
令和6年3月27日保医発0327第10号「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について(通知)
おわりに
本改正には令和7年5月31日までの経過措置が設けられていますが、経過措置終了間際になるとホームページ制作会社への問い合わせや更新依頼が集中し、対応に時間がかかることも考えられます。できるだけ早く、書面掲示事項のホームページ掲載についてご対応いただくことをおすすめします。
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書面掲示事項のホームページ掲載が義務化された背景には、デジタル社会の実現に向けた政府における共通の指針である「デジタル原則」があります。「自ら管理するウェブサイトを有しない保険医療機関等は対象外」とされていますが、ホームページをお持ちでない医療機関様も、この機会にホームページ制作を検討してみてはいかがでしょうか。