※この記事はニチイ学館が従業員に配信する社内報の内容をもとに作成・掲載しています
目次
クレーム対応の基本
クレームには実はサービス改善のヒントがあり、迅速に、しっかりと対応することで「思い切って意見を伝えて良かった」「またこの人に対応してほしいな」と、ファンにもなることをあります。
とはいえ、クレームをいただいた際の対応方法の基本がわからないと、どうしても不安になってしまいますよね。特に、感情的な方の対応には強いストレスがかかり、相手の勢いに飲み込まれたり、反射的に謝ってしまったりと、苦手意識のある方も多いと思います。
ここでは、そんな不安や苦手意識を少しでも軽減し、どのような患者さんにも落ち着いて接することができるように、クレーム対応の基本をご紹介します。
※職場で「クレーム対応マニュアル」等が有る場合、その内容を改めて確認し、基本的にはそのマニュアルに準じて対応しましょう。
初動対応が重要
「クレーム対応は初動がすべて」ともいわれるほど、初動対応は重要です。初動対応を誤れば、例えば待ち時間に対して怒っていたはずが「なんだその口の利き方は!」 と、私たちの対応の苦情に発展する恐れもあります。初動対応のステップとポイントを確認してみましょう。
傾聴と共感
まずは、相手の「ご要望・要求が何なのか(何をどうして欲しいのか)」を正しく理解することが大切です。そして、相手に「共感」し、私はあなたの味方であるという意思を伝えましょう。
◇共感のポイント
「あなたの気持ちを理解しました(理解したい)」という寄り添う姿勢を言葉として伝えましょう。そして、相手の気持ちをくみ取った返事をします。この際、相手を否定せずにしっかりと話を聞き不安に配慮すること、あいづちや表情・姿勢、必要に応じてメモを取ることも大切です。
例「こんなに待たせるなら、先に言えよ! 時間の無駄じゃないか!」
NG「…すみません…」話す気がなくなるような態度などはNG
OK「おっしゃる通りです。先にお伝えすべきでした。申し訳なく思っております」
クレーム内容の事実確認
相手の話をしっかりと聞いたうえで、クレームの内容が正当であるかどうか、事実の確認を行います。(※ただしクレームではなく「苦情」の場合は、「不愉快な思いをさせてしまい申し訳ございません」のように、STEP③の「謝罪」を先に行います。)
この際、確認した事実・出来事をそのまま相手に伝える必要はありません。
例えば、「診察券を返してもらっていないんですが」という患者さんに対して、実際には違う患者さんのファイルに診察券が紛れていた場合でも、「こちらでお預かりしたままになっておりました」と表現を変えて伝えます。
心をこめたお詫び・謝罪
謝罪は、何に対してのお詫びの言葉かを限定して伝えましょう。
例「お待たせして申し訳ございません」「説明が不足しており申し訳ございません」
謝罪のあとは最敬礼(深いお辞儀)をします。
また、診療内容等についてはむやみに謝罪の言葉を口にしてはいけません。例えば「誤診だ!」と怒鳴る患者さんに対し、「怒っているからとりあえず謝る」では、自分にその気がなくても誤診を認めたことになります。まずは患者さんの話をしっかり伺い復唱し、医師に説明をしてもらいましょう。
速やかに解決する姿勢と対策案の提示
たとえ、ほかにやるべき作業や対応があっても、クレーム・苦情処理を最優先し、速やかに解決策を提示します。解決に時間が必要なクレーム・苦情は、解決するための方法・流れを伝えましょう。
例 「責任者(上の者)へ必ず申し伝え、(前向きに)検討させていただきます」
事実確認に時間を要する時は、改めて説明する時間を設定します。そして最後に「貴重なご意見をいただき、ありがとうございます」と感謝を伝えましょう。
例「こんなことになった原因は何だったんだ!」
NG「きっと(多分)、○○が原因だったのだと思います」
OK「しっかり確認して、お答えしたいと考えておりますので、改めて説明させていただくお時間をいただけますか?」
こんなケース、あなたはどうしますか?
頭ではわかってもいざという時にどうしても焦ってしまうのがクレーム対応です。「クレーム対応の基本」の4つのポイント(①傾聴・共感、②確認、③謝罪、④対応策)を意識して、次のロールプレイを行ってみてください。この際、動画を撮って自身の対応を見ることで更なる気づきを得られるかもしれません。
~ 待ち時間のクレーム患者対応~
<事例>
受付から診察までに40分の待ち時間がある状況です。患者様が「すみません、〇〇ですが、もう40分待っていますが、まだですか?」とあなたに声を掛けます。
<対応例>
【傾聴・共感】
応対者:「〇〇様ですね?それは、大変失礼いたしました。すぐに確認してまいりますので少々お待ちいただけますか?」
【確認・謝罪】
応対者:「〇〇様、お待たせして申し訳ございません。只今確認したところ、本日は(連休明けのため)大変混雑しており、全体的に診療までの待ち時間が長くなっておりました。40分も説明なくお待たせしてしまい、大変申し訳ございませんでした」
患者:「そうでしたか」
【対応策】
応対者:「〇〇様は次にお名前をお呼びするところでしたので、恐れ入りますが、もう少々お待ちいただけますか?」
患者:「分かりました」
クレームを未然に防ぐコミュニケーション
待ち時間が長くなりそうな時はあらかじめ「本日は連休明けで大変混雑しておりますので待ち時間が長くなりそうです」などと伝えておくだけで、患者さんは覚悟して「待つ」ことができ、待ち時間にご協力いただきやすくなります。
タイプ別対応のポイント
ここからは、患者さんのタイプ別にクレーム対応のポイントをご紹介します。
①怒りを前面に出すタイプ
<特徴>
「不当な扱いを受けた」「不満をぶつけたい、分かって欲しい」と訴える傾向が強く、「どうなっている、すぐに対応しろ!」などと怒って大声を出す。
<対応POINT>
このタイプは感情的になっていることが多く、対応者は緊張・委縮状態になりがちです。まずは患者さんの気持ちに共感し、冷静に話す雰囲気をつくることが大切です。
「おっしゃることはよく分かります。お話を詳しくお聞かせいただけますか」など、相手の気持ちを尊重して向き合うことで、自分の話を正面から聞いてくれると、落ち着いて話す気持ちになることも多いでしょう。
また、感情を爆発させている場合は、場所を変えることで感情が落ち着くこともあります。その場で対応することで周囲の患者さんにもストレスを与える原因となってしまうため、相手がヒートアップしている場合には別室にご案内しましょう。
②「上を出せ」と言うタイプ
<特徴>
自分を大切にして欲しい、認めて欲しいと考える傾向が強い。
<対応POINT>
このタイプには、対応者を明確にして最後まで責任を持って対応することが重要です。対応者は「私がこの窓口の責任者です、あなたのお話は私が責任を持ってお聞きします」と患者さんに明示しましょう。
「責任者」が誠実な対応を行えば、相手の自尊心は満たされます。ただし、相手の話を聞いたうえで、自分では対応できない内容だと判断した場合は、速やかに対応者を変えられるよう、誰に声を掛けるべきか事前に確認しておくとよいでしょう。
③筋道を立てて理路整然と話すタイプ
<特徴>
自分の話は正しい、自分の意見に従うべきだと考える傾向が強く、感情的な表現はせず理論的に話を詰めてくる。
<対応POINT>
このタイプは、対応者の話につじつまが合わないと指摘したり、対応策はこれしか認めない!と指定したりすることがあります。注意すべきことは、患者さんと議論をしないことです。議論したり言い負かしたりすることは、クレームの解決にはつながりません。
たとえ患者さんと意見が異なっても、「おっしゃることはごもっともです。同様のご意見をいただくこともございます。私どもでは、○○と考えておりますが、いかがでしょうか」などと患者さんの意見を尊重したうえで、協力して解決する姿勢をみせることが必要です。
時に、法律や制度を根拠に自分の意見を主張するタイプの方もいます。このタイプに対しては「確か〇〇だったと思います」など、あいまいな表現やあやふやな態度はNGです。こちらの対応に不備があれば訴えると脅すようなケースも想定されます。
「すぐに答えられるもの」と「すぐに答えられないもの」を明確にしましょう。「すぐに答えられないもの」はしっかりと事実確認することも重要です。
ここではタイプ別の対応ポイントをご紹介しましたが、相手の考え方や価値観は千差万別であることを忘れてはいけません。クレーム対応に限らず、どんなときも「相手の気持ちに寄り添う」ことを意識することが何より大切です。