広島市立舟入市民病院様 病院概要
地方独立行政法人広島市立病院機構 広島市立舟入市民病院
所在地:〒730-0844 広島県広島市中区舟入幸町14番11号
TEL: 082-232-6195
許可病床総数:156床(一般病床140床・感染症病床16床)
公立病院として時代の要請に合わせた医療を提供
長く広島市内および周辺住民の健康を支えてきた舟入市民病院様。1895年の設立当時、大陸で流行していたコレラなどの感染症の国内流入を防ぐため、広島市沖の似島に開設された「臨時陸軍検疫所」から継続療養を引き受ける「避病院(伝染病院)」として設立されました。
舟入市民病院 病院長 髙蓋 寿朗様
舟入市民病院 病院長の髙蓋寿朗様は「広島市立の病院として政策医療を担い、民間病院では難しい診療を積極的に提供しています。1945年8月6日の原爆投下後は被爆者の救援にあたるなど、時代の要請に合わせて変化しながら地域医療に取り組んできました。近年は小児科の救急診療に力を入れており、広島市都市圏全体をカバーする拠点となっています」と説明します。
感染症対応には今でも注力。2009年の新型インフルエンザ、2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行時には、最前線の砦として機能しました。
後者の際はコロナ病棟を最大64床まで拡大し、中等症までの患者を2500人以上受け入れています。県内で1例目の患者を受け入れたこともあり、当初は病院全体が混乱に陥りました。発熱外来が設置され、一般の患者と新型コロナ感染症の疑いのある患者の動線を分けるなど、受付や会計を担う医療事務も大きな負担を強いられました。
舟入市民病院 事務室 医事係 係長 岡野 靖二様
当時の事務の状況を舟入市民病院 事務室 医事係 係長の岡野靖二様は「国からの通知も二転三転し、それに合わせて毎回対応を変えていきました。やっと慣れた頃にまた対応を変えなければならないことが繰り返しあり、それは大変でした。請求の加算も時期によって変化しました。一時期コロナの診療はお金がかからないといったイメージがついたこともあり、窓口でこの請求は間違いではないかといった問い合わせが増え、対応に追われていました」と振り返ります。
「QCサークル活動」を経て、月間約350時間の効率化を実現
舟入市民病院は、2012年4月から受付や会計業務をニチイ学館に委託しており、2024年12月時点で27人のスタッフが勤務しています。普段は定型の業務フローに従って業務を行っていますが、イレギュラーの対応が必要になるとニチイ学館の現場管理者やスタッフから岡野様に相談が上げられ、病院として対応を行います。
「ニチイ学館の現場管理者とスタッフは、トラブルや困りごとを情報共有しており、緊急性のある場合は即時、そうでなければ月一回の定例会で報告してくれます」(岡野様)
ニチイ学館は2015年から、会社全体で「QCサークル活動」を実施しています。派遣先の職場ごとに業務改善に取り組み、その結果を毎年「QCサークル活動本社事例発表会」で発表。2024年には舟入市民病院様が最優秀賞を受賞しました。
取り組みは多岐にわたります。例えば、来院者に手続きの流れがわかるよう掲示を見直したり、人感センサー付き自動音声案内を導入して来院者が通ると「保険証を出してください」と声を掛けるようにしたことで、案内業務を削減。窓口での対応時間も短縮でき、月間160時間(4時間×2人分×20日)の効率化を実現しています。
他にも面会許可証の返却箱を設置することで、平均3分間あった面会者の待ち時間を0分にし、受付の対応時間も月間187.5時間(平均15秒×1500件)短縮するなど、2024年9月30日時点で現在進行中のものを含め、合計32件の提案を実施しています。これらの効率化により余裕が生まれ、患者様への丁寧な対応にもつながっています。
岡野様は「QCサークル活動」を、次のように評価します。「他の方法を知らない内部の人間がこれまでのやり方を自ら変えるのは難しい。その点ニチイ学館のスタッフは、他の病院の多様な取り組みを知っているので、外からの目で慣習を見直して提案してくれます。結果的に患者さんからのクレームが減少傾向にあります。いろいろな会社に業務委託をした経験がありますが、無難に業務をこなすだけでなく、提案までしてくれるのは珍しい。特に現場管理者の方は、これまでの業者の担当者の中でもトップクラスに優秀な人材と感じています」。
髙蓋様もニチイ学館のスタッフについて、「受付は病院の顔ですから、ちょっとした対応で印象が大きく変わります。私自身が受付のスタッフと関わることは多くありませんが、丁寧で感じのいい対応をしてくれていますし、電話の取り次ぎなども丁寧です」と語っています。
コロナ禍での対応については、次のように話します。「最初の1年くらいは毎日のように状況が変わり、それに対応する必要がありました。その中でも事務スタッフはほとんどトラブルなく動いてくれました。しかも当時はコロナ患者を受け入れている病院に勤めていることが言いにくい雰囲気すらある中で、最初に来る患者さんと接するわけです。それでも事務部門内での感染拡大は起こることはなく、よくやってくれたと思っています」。
委託範囲をさらに拡大、県の新構想にも対応見据える
舟入市民病院様は、2025年4月より新たに内科と小児科の受付をニチイ学館に委託することを決めています。従来は院内のスタッフが対応していましたが、医師の負担を軽減すべく、診療事務を担う「医療クラーク」へ配置転換するために新たな人員が必要となりました。「今はニチイ学館と一緒に、業務フローの見直しを行っています」(岡野様)。
広島県は舟入市民病院様が担っている小児診療機能を、2030年に広島駅北口に開設する新病院へ集約する構想を明らかにしました。そのために今、新たな病院の在り方を模索しています。取り組みの一つは高度急性期病院から回復期の患者を受け入れ、自宅療養などに橋渡しをする「ポストアキュート機能」の強化です。
また、2024年4月から不調が多岐にわたったり合併症があるなど、どの診療科にかかればいいかわからない患者に幅広く対応し、必要に応じて治療をしたり原因を特定して専門医に橋渡しをする「総合診療科」を開設しました。「幸い好評なので、さらに強化していきます」(髙蓋様)。
舟入市民病院様が業務改善を続けられているのは、ニチイ学館の提案力と共に、それに耳を傾け提案に対して柔軟に対応している病院側の姿勢です。岡野様自身、業務改善の必要性を以前から感じており、提案されたらまずは試してみようと、両者が一緒になって取り組みを進めてきました。「これからも病院スタッフとニチイ学館スタッフが互いに協力しあえる関係を継続し、患者さんへのサービス向上と適正請求ができるよう期待しています」。
※本取材は2025年3月時点での取材内容となります。